(つづき)

レイコちゃんもバカだねー。
ちょっとばかりいい男だからって結婚してるヤツに
入れ込んだりして。可哀想に、男にとっちゃ
所詮遊びなんだよ。

そんな風に、誰かが無責任な感想を抱いたところで、
どうということはない。そんな目には何度も合っているし、
慣れている。言わせておけば良いのだ。
私の気持ちは揺るがない。

でも・・・・。

その場にダーリンが居たとなれば話は違う。
目の前でそんな風に扱われている私を見ても、
これといって反応を示さず、見過ごすダーリンに
私は少なからず失望した。

確かに私は平気だった。

でもダーリンは、私が『平気であること』に甘えてはいけない。
少なくとも、私がそう言われることについて、責任を感じなければ
おかしい。そう、ダーリンは、私をかばうべきだった。

一方的に惚れて、遊ばれているバカな女という、
私に貼り付けられたレッテルを、剥がす努力を
彼はすべきだったのだ。滑稽でも、見苦しくても。

私が泣くような茶番を演じる前に、彼がマスターを制し、
幕を引いていれば、もっとスマートに事態が収束しただろう。

失望という穴を埋めるために私は彼を挑発した。
愛していても、いや、愛しているからこそ見過ごせないのだ。

「フン。私はまるでバカね。一方的にあなたに惚れて
もて遊ばれてるみたい。いい笑い者だわ。
黙って聞いてるあなたは、色男ね。
格好いいったらないわ(笑)」

ダーリンは、怒り始めた。

自分たちの気持ちさえ、しっかりしていれば問題ない!
マスターにわかってもらおうとする必要なんて、どこにある?
所詮は他人だ。ひとごとなんだよ。本気で相手にしたところで
伝わるもんか!

ちがうわ、ダーリン。
マスターにわかってほしいんじゃないのよ。
あなたの心意気を見せてって言ってるのよ。

そう思いながらも、言葉にせずに、私が「ふーん。」と笑うと、
ついにダーリンは切れて、車を店に戻させた。
私は車からは降りず、ダーリンが肩をいからせて
店に乗り込んで行く後姿を見つめていた。

素敵よ、ダーリン(笑)

ほどなくダーリンが戻ってきた。
マスターが、神妙な顔つきで見送りに出てきて
私の表情を探るように視線を寄越した。

車がすべるように走り出したその刹那、泣いていたはずの
私は、ダーリンの死角にあたる位置から、マスターを見上げて
冷たく笑いかけた。呆気にとられているマスターの表情が、
窓の向こうに流れて消える。

マスター。
私は幸せなの。
そうよ、不倫でもね。
また来るわ。
今度は楽しいお酒を飲みましょう。

バイ。
 
・・・・・「ねぇ。マスターに何て言ったの?」

「『考えていたら腹が立ってきたんで戻ってきた。
 これだけは言わせてもらうけど、レイコにはこの俺が
 惚れてるんだ。いいか、俺が惚れた女だ。』って怒鳴った」

ダーリン、よくできました、まる。

その夜、ダーリンは私をずっと抱きしめていた。
守ってやれなくて、ごめんな
髪を撫でながら、耳元で囁くダーリン。

私が何を言いたかったのか、わかってくれたようでハッピー。
オワリ良ければ全て良し。
ダーリン、愛してるわ。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

まだテーマがありません

この日記について

日記内を検索