愛ねぇ。

2003年9月12日
昨夜は彼と飲んだ。
帰り際、私の誕生日が近いというので、店から薔薇を一輪
プレゼントされた。丁寧にラッピングしてあってとても気が利いている。
花を手に、私たちはホテルに向かった。

シンプルで清潔な空間。無機的で清閑なその部屋は、
恐らくは『家庭』や『団欒』と対極に位置する場所だろう。

彼と抱き合い、そのまま眠りに落ちて、夜中に目を覚ました。
いつもそうするように、確かめるように彼に手を伸ばすと、
同じく目を覚ましていた様子の彼が、やけにハッキリした声で言った。

「レイコ。お前、オレのこと、本当に愛しているのか。」

恋人同士の戯れの言葉遊びにしては、あまりにも声が静か過ぎる。
「愛してるに決まってるじゃない」という答えは軽すぎてそぐわない感じ。

黙っていると、彼は私が寝てしまったと思ったようだった。
「レイコ?」彼が私を覗き込むのと同時に私は静かに言った。
「私に愛されていると感じないからそんなことを聞くのね・・・?」
彼は黙ってしまった。

私は昼間のことを思い出していた。

ランチのときに私は彼に聞いたのだ。
「裁判はいつ頃にするつもりなの?」
だしぬけに。唐突に。彼は不意を衝かれて言葉をなくした。

「今は仕事がたてこんでいるから、そうだな、少なくとも今の
仕事の目処がついてからになりそうだ。でもちゃんと考えている。」
コーヒーを一口飲んで、新しい煙草に火をつけながら
ようやく彼はそう言ったのだった。

薄明かりの中で彼の規則正しい寝息だけが、
優しいリズムを刻んでいる。彼は眠ってしまったらしい。

愛ね・・・。

不倫の当事者が好んで使う「愛」という言葉は、
実際には愛の本質に程遠い。

私を愛しているなら、奥さんと別れて!
俺を愛しているなら、立場も理解してくれ!
私を愛しているなら、私の気持ちもわかってよ!
俺を愛しているなら、俺の気持ちを察してくれよ!

相手の愛(らしきもの)に付け込んで、私欲を満たす。
愛を試そうとしている時点で、愛が無いのに。
愛を言い訳に、愛を武器に、愛をないがしろにする。

状況の正当化。理由付け。だから不倫って不純なのよねー。
嫌だわ!って、私も不倫の当事者じゃないの。おほほ。

ダーリンは私の愛を測って、何を手に入れようとしているのだろう。
裁判のことを話題にした私に愛が無いとでも言いたいのだろうか(笑)

「愛しているわ」という言葉に安心できるなら、あなたの妻が言う
「愛しているわ」だって真実になってしまう。

ダーリン。愛は感じるものよ。
便利な言葉なんかじゃない。

私はあなたの愛を逆手に取って、何かを欲しがったりしない。
愛しているなら××してよ
愛しているなら○○できるはず
なんて、言わないわ。

愛を手段にするなんて、愛じゃないもの。

愛の象徴とされる薔薇の花を見ながら、
私は彼の腕に包まれていた。

気持ちいい。静かで冷たい空間でもかまわない。
どんな場所よりここが好き。
それが愛ってものよ、ダーリン。



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