非通知着信

2003年9月5日
会社の電話が鳴る。番号「非通知」の着信。
取引先にもいくつか「非通知」の会社があるので
不審に思わず電話に出たが、相手は何も話さない。

・・・?

あまりに長い沈黙なので、受話器を置こうとしたその時、
「・・・だれ?」という幼い声が聞こえた。聞き覚えのある
その声は、間違いなく彼の子の声だった。

「もしもし?○○ちゃん?」。
自分の名前を呼ばれたことに安心したのか、彼の子は
幾分大きな声で話し始めた。「パパは・・・?」

彼の妻が横で聞いているかもしれない。
電話に出たのが社員だとわかっていても、「オンナ」だと
いうだけで妻はイライラするに違いない。うふふ。

私はこれ以上ないというほどに優しい声で応じた。
「○○ちゃんのパパはね、今ここに居ないの。
今日は違う場所でお仕事しているのよ。
携帯電話にお電話してみたかな?」

「・・・ん・・・したけどね、切れるから。」
そうだった。彼は自宅からの電話も着信拒否しているのだ。
着信可能にしておくと、妻からひっきりなしに電話が入り、
あっという間に電池切れになるのだから仕方ない。

「そっか。じゃあ、○○ちゃんから電話があったって、パパに
言っておくね。○○ちゃんに電話してね、って言うからね。」

「ん・・・。」 沈黙。私は「一度切るね。」と言い、彼の子が
電話を切ったのを確かめてから彼に連絡した。
彼は、自宅に電話を入れたが、時間に追われる仕事を手がけて
いるため、手短に済ませたようだった。すぐにまた「非通知」で
会社に電話がかかってきたのだ。

「○○ちゃん?パパからお電話、あった?」
「うん。でも切れたから・・・。」
「そっか。もう一度電話してもらう?」
「うん。」
「ママはどうしたの?」
「寝てる」

ふて寝ですか、奥様(笑)

幼い彼の子が、自分の意志で会社に電話してくるとは思えない。
「パパはいつ帰るんだろう」等、彼の話題になったとき、彼の妻が
すかさず「自分で聞きなさい」と電話させたのだろう。

彼にメールで連絡すると、すぐに電話があった。
彼はかなり怒っていた。

「何考えてるんだ、ヤツは!仕事にならないじゃないか!」

もちろんその怒りの矛先は可愛いおチビちゃんにではなく、
馬鹿な妻に向けられていた。妻の魂胆などお見通しというわけだ。

気持ちはわかるけど、私に怒っても何も解決しないのよ、ダーリン。
私はまわりを社員に囲まれているのでめったなことは言えない。
ただでさえ皆は彼の子からの電話を訝しく思っているはずなのだから。

「はい、はい。」事務的に返答していると彼が言った。
「非通知の着信は拒否設定してくれ。」
何を言ってるの、ダーリンのおバカさん。
大事な取引先も拒否するの?それは無理よ。

「子供をダシにしやがって!」そう、もちろん奥様のこと。
結局彼は自宅に電話をして、もう一度子供と話し、少し時間を
かけて言い聞かせたようだ。その後は電話はかかってこなかった。

ほどなく妻から届いたメールには「自分で聞きなさいと言って
電話させました。あの子をダシにしてるわけじゃない」とあった。
やっぱりそうだったのね。

奥様。無駄よ。彼はあなたの相手なんかしないわ。
いろんな手を使って、構ってもらおうとしても無理なの。

ところで既婚男は往々にして、子供を理由に
不倫チャンをなだめる傾向がある。

妻のことは愛してないけれど子供のことは別
子供の行事だから仕方ない
子供のための家族旅行だ
妻が不機嫌になると子供が可哀想だ・・・エトセトラ

不倫チャンによっては「あのガキさえ居なければ!」と
子供に憎しみを抱くこともある。妻の血が流れていると思うだけで
その存在が汚らわしいと感じる、と聞いたこともある。怖いですねー。
不倫男さん、あなたの愛人チャンはどうですか。
愛人チャンの性格をちゃんと把握するまでは子供ネタを乱用
するのは危険かもしれません。うふふ。

ダーリンはラッキーでした。私は彼の子を憎んだりしないし
彼が子を思う気持ちを愛しいと思っているのだから。

「あいつ、死んでくれないかな。」
時々彼が真顔で言う。
誰か奥様を駆除してくれないかしら。

あーら。駆除されるべきは私だったわね。おほほ。


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