モデルルームで遊ぶ

彼と新築マンションのモデルルームを見学しに行った。

正式に別居が決まったことだし、いつまでも実家に
甘えているのもどうかということで、いよいよ彼は
一人で住むことを考え始めた。そこで、賃貸の物件を
探そうとしていたのだが、偶然通りかかった場所に
モデルルームがあったので、覗いてみることにしたのだ。

まず最初にアンケートに記入することになっている。
途中で鉛筆を持つ彼の手が止まってしまった。
覗いてみると、「家族構成」の欄である。

彼はしばらく考えて、いたずらっぽく笑い、そして
「子供が3人居る夫婦」ということにしていた。
まったく（笑）

書き終えたアンケートを見た、担当の営業マンが、
アンケートと私を見比べて、一瞬訝しげな表情を見せた。
が、すぐに愛想の良い笑顔に戻って
「え・・・それで、お住まいになるのは・・・？ご家族で、
でしょうか・・・それとも・・・？」と含みを持たせた言葉を
投げかけてきた。

ははん・・・。

なるほどね。愛人にマンションを買い与えてやる社長なんか
いくらでも居るのだろう。私たちもそう見えたのだろうか。
それにしては、彼が若すぎるので不審に思ったのだろうか。

自信たっぷりに彼が答える。
「妻と、子供3人、全員で5人で住むつもりです。」
何言ってるのよ、ダーリンったら（笑）

真新しい家は、とても気持ちが良い。設備も最新だし、
モデルルームだから生活臭もない。不自然な場所に
置物があろうとも、美しければそれで良いのだ。

あら。モデルルームって、愛人チャンみたいね。
使い勝手なんてどうでもよくて、新しくて綺麗だったら○。
注目されるのは、最初だけ。なんてね（笑）
システムキッチンに触れながら、馬鹿みたいな考え事を
していると、彼と営業マンに呼ばれた。

返済計画とやらを叩き出そうとしている営業マンを見て
私は微笑みながら彼に言った。「これは安い物件よねーー。
あなたが前に買ったマンションは倍以上の値段だわ。」

驚いた表情の営業マン。でも本当のことなのよ。

そう。今、妻がしがみついている、さびれたお城のこと。
流行おくれのプランドものと、子供を抱きかかえて、
必死の形相でしがみついている妻が住む、あの家。

まずは、あの家を売り払わなくては。

結局、モデルルームを2つもハシゴした。
夫の顔色を窺う気弱な妻と、カカア天下な妻、という二つの
テーマで演じてみた。なかなか楽しかった（笑）
　
不倫チャンにお勧めの遊びです。
でも、暗くなっちゃダメよ。
そう、ダーリンのように。

「レイコ・・・俺、ちょっと寂しかったよ。
これが本当に夫婦だったらどれだけ嬉しいか・・」なんて。
だめだめーー。寂しがったりしちゃダメよ。
何でも楽しまなくちゃ、ね、ダーリン。

でも、そんなあなたが実はとても愛しいの。うふふ。