家族ごっこ

「レイコ、ゴールデンウィークはどうするの？」

彼に何度も尋ねられたけれど、私は直前まではっきりした
返事をしなかった。

彼が予定を聞きたがる理由はわかっている。
妻に予定を知らせて欲しいとせっつかれていたからだ。
彼の妻はゴールデンウィークのプランを、あれこれと
考えては何度も彼にメールしてきていた。

だが、彼は返事しない。出来ないのだ。
なぜなら、私が曖昧な返事を繰り返していたせいだ。

私の予定を早々に知らせると、おのずと彼の帰宅日も
決まり、彼はそれを妻に伝えるだろう。
それじゃ面白くない。直前まで曖昧にしておく方が
妻の独りよがりな姿がクローズアップされて、楽しめる。

なんちゃって！冗談よー、冗談！　

それにしても奥様、調停の件で、眠れないはずなのに、
レジャーの計画ですか？（笑）
どうしても、何が何でも、「家族ごっこ」を続けたいのね。
現実を直視せず、逃避を繰り返していてもしかたないのに。

さて、今日私は彼に告げた。
「今日は私、○○に行くことになったの。」
そして笑顔でこう言った。「どうせなら、今日（自宅に）
帰れば？私も予定が入ったことだし。」

そう、暗に「日曜と月曜は二人で過ごしましょう」と言ったのだ。
かくして彼は、昼過ぎに自宅に帰っていった。
「今日子供と遊んでおけば、あとはレイコとの時間だ。」と笑顔で
言い残して。やっつけ仕事の家族レジャーってわけねー
ダーリン、お疲れ様。頑張ってね、行ってらっしゃい。

あ、奥様の「連休プラン」はワタクシが責任を持って
ゴミ箱に捨てておきますぅー。いいのよ、お気になさらないで☆

夜になり、彼は私のもとに戻ってきた。
おチビちゃんも楽しめたようで何より。

奥様は相当ご不満だったようで、じゃんじゃんメールが届く。
一方的に計画を立てて、あそこに行きたい、ここに行きたい、
ああして、こうしたい。いついつ、帰宅して欲しい。

まだ言ってるのね。
だ・か・らー。無理ですってば、奥様。
今から私とダーリンは車に乗って遠出するのよ。
楽しみ、楽しみーー。

彼が放り投げた携帯を拾い上げ、私は丁寧に返信した。

「無理」。

バイバイ奥様。行ってきまーす。