彼と過ごしていたときに、例の「いい男」から電話が入った。
電話には出なかったが、彼は目ざとくチェックを入れた。

「着信、誰だ?」と。

彼は今まで、私の電話相手が誰であろうと、
気にしたことはなかったのに、今回は私を問い詰め、
私の手から電話を奪った。

その男からだと私が白状してから、ちょっとした波風が立った。

彼は私とその男との間に何があったのか知りたがった。

電話で話したのか?
会う約束をしたのか?
会ったのか?
寝たのか?

凄んでみたり、猫撫で声を使ったり、あの手この手で聞き出そうとした。

私は全てを彼に差し出すつもりは全く無い。
「包み隠さず話した」と私が言ったところで、彼はきっと信用しないだろう。
ましてや、それにひとつ嘘を織り交ぜようものなら、嘘の上塗り、
言い訳の羅列に走ってしまうのは間違いない。
それなら話さない方が良いのだ。

彼自身、浮気の度に「真実」と称し、嘘を重ねていたのが
その良い例ではないか(笑)。結局のところ、どこまでいっても
お互いが納得できる真実なんてありえない。
例え、私が本当に真実を話そうとも、ね。

なーんて、自分の行状を棚上げするための屁理屈みたいだけど
よろしいんじゃないでしょうかー(笑)


私が「何もない」と言い続けることで、雲行きは怪しくなっていった。
彼は感情の起伏が激しく、怒鳴りつけたかと思うと、沈み込んだ。
そして、なんと彼は自分の浮気を白状することと引き換えに、
私から「真実」を聞き出そうとしたのだ。

酔いに任せて彼は告白した。正直言って驚いた。

私は彼の数多くの浮気を早期発見してきた。
浮気を上手に隠せずに、いつも私に暴かれていた彼に、
ある種の微笑ましさすら感じていたというのに。
とんだ自惚れだったようだ。ザマはないわね(笑)

彼は私の目をすり抜けて、まんまと浮気していたのだ。
もちろん、100%検挙できたと思っていたわけではないが、
これほどだとは思わなかった。
こりゃ一本取られましたわ、ダーリン(笑)

彼はよく言ったものだ。
「レイコにはかなわない。すべてお見通しだな。
レイコに隠し事は出来ない」と。
そう、素晴らしい笑顔を添えて。
フン(笑)、やるわね。

彼の話を聞いても、特に感情の乱れはなかった。
驚きはしたが、あまりにも何も感じない自分に戸惑った。
とりあえず、涙を浮かべてみる。
ポロポロと面白いように泣けた。強がりではなく、「ここで泣くべき」と
脳が指令を出した途端、顔を歪ませて私は泣いたのだ。

あらためて思ったのだが、妻は彼の浮気を発見して
どうしてあれほど怒り狂ったのだろう。
私は全く怒りを感じなかった。

こんな風に書いてみると、彼はまるで無類の女好きにも見えるが
そうではない。(と、少なくとも私は思っている)
お金をある程度自由に使える、似たような境遇にいる他の男たちと
比較すると、彼のやっていることなど、まだまだ可愛いものだ。

彼が殊更に暗い顔をしているのは滑稽だった。
私が「もういいのよ、気にしないで」と、ありきたりな言葉を
平坦な口調で言うのも可笑しかった。
泣くには泣いたが、これ以上続けるのはキツかった。
ほんと馬鹿みたい、つまらないドラマのようだわ。

彼は駄目押しのように言った。
「最低だろう。俺はレイコに相応しくない男だ」。
相応しくない?何を今さら…。

彼は私がこの芝居に応じると思っていただろう。
彼の告白に恐れおののき、涙に打ち震えながら、
私も告白をする・・・・!という筋書きまで見えていた。

ふん、やってらんないのよ。
私が芝居を打つことで、彼にプラスになると思えば
私はいつだってそうしてきたわ。
でも、これは私の行動を暴くための猿芝居じゃないの。

これじゃあなたと妻との茶番劇とそう変わらないわよね。
私は乗らないわよ、ごめんだわ。

熱演中の彼に冷水を浴びせるように私は言った。
「じゃ聞くけど。相応しくないといったらどうするつもり?あなた、
私と別れるの?そうじゃないなら、こんな滑稽な会話はごめんだわ。
これきりにしてよね」。

彼は私が、彼の浮気のことで怒っていると思ったようだった。

誤解しないでね、ダーリン。
私はあなたの浮気ごときで怒ってるんじゃないのよ。
あなたほどの男が、そんな陳腐なセリフを吐くもんじゃないのよ。
まったくナンセンスだわ。私はね、雄々しく、逞しく、強気で、
尊大なあなたが好きなのよ。

というわけで、他愛無い私の艶話、お許しになってね、
ダーリン(笑)

彼は諦めたように、笑顔でこう言いました。

「わかったよ、レイコ。お前はヤツと寝たと思っておくことにする。
最悪を想定していれば、後で何を知ろうと俺は気にならないからな」

そう、それでいいのよ、ダーリン。
最悪も何も、そもそもあなたがけしかけたのよ?

都合、良すぎですか?
うふふ、真実は神のみぞ知る♪

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