無神経

彼は無神経な男だと思う。
いちいち指摘していたらキリがないほどに。

例えば彼は自宅の経済状態などもすべて私に話す。
彼流に言うと「隠し事はしたくない」ということらしいが。

彼の妻が彼の稼いだお金でどんな贅沢をしようと、私には関係ない。
妻に対して感じることと言えば、買い物の内容まで私なんかに
知られちゃってお気の毒さま、といったところだ。

ただし、彼に対しては色々と感じることがある。
妻の勝手や贅沢を、見て見ぬフリしている姿には幻滅することもある。

でもまぁ、男というのは面倒なことが嫌いなのだ。
もめるとわかっていて、妻に小言を言う気はしないだろう。
私だって、彼の「面倒なことが嫌い」という性格の
恩恵に与っているわけだし。
というわけで、今となっては少しぐらいの出来事は気にならない。

しかし、さすがに今日はあきれた。
彼は、私の名義を使った資金対策を提案した。

彼の顔を見つめて、黙って話を聞いてから私は彼に言った。

「それは何のための対策？
　まさかあなたの家庭の経済状態を保持するために
　私の名前を使うってことかしら？
　それとも私たちの未来のため？
　あるはずのない、将来のため？(笑)」

「そんなつもりでは…」と言葉を濁す彼。
いいのよ、あなた(笑)
そういう無神経なところも好きよ。

でも名前は貸さないわ。
私はあなたのために存在するのよ。
あなたの妻や子供のために存在するんじゃないのよ。

よく覚えておいてね。